
ちいさな「思いやり」の循環に、心がふっと軽くなる
『どうぞのいす』 香山美子 作/柿本幸造 絵
育児と介護、そのどちらも手を抜けない日々。
自分のことは後回し、気がつけば誰かのために動き続けている——
そんなダブルケア(育児と介護の両立)に関わる方々の日常に、そっと心優しく寄り添ってくれる一冊が、この絵本『どうぞのいす』です。
物語は、うさぎさんがつくった小さな椅子から始まります。
「どうぞのいす」と書かれた立て札とともに木の下に置かれたその椅子は、
通りかかる動物たちに「どうぞ」の気持ちを静かに伝えていきます。
ろばさん、くまさん、きつねさん……誰もが、そこにある「思いやり」を受け取り、
次の誰かのためにそっと何かを残していく。
直接顔を合わせることはなくても、「優しさ」は、ちゃんとバトンのように繋がっていくのです。
家族のケアに追われる毎日の中で、自分の優しさが誰かに届いているのか、
見えなくなることがあるかもしれません。
でも、この絵本は教えてくれます。
たとえ相手に直接会えなくても、「思いやり」は静かに、確かに伝わっていくのだと。
親子で読んでも、ひとりで手にとっても。
心にぽっと灯りがともるような、やさしい時間をもたらしてくれる絵本です。
ぜひ、少し疲れた時にこそ、開いてみてください。